# フィリピン市民権の取得による日本国籍の喪失 フィリピン法の市民権(Citizenship)は、フィリピンの国籍を意味します(フィリピン憲法第4条参照 https://www.officialgazette.gov.ph/constitutions/1987-constitution/#article-iv )。 フィリピン人の子である日本国籍者はフィリピンの市民権を申請取得できますが(Recognition as a Filipino Ctizen, RAFC)、これをすることは国籍法11条の規定する「自己の志望によって外国の国籍を取得したとき」にあたり、日本国籍を喪失することとなります。 ![[国籍法11条]] # 知らずに手続きをしてトラブルとなった事例 「市民権」という言葉に騙されて、市民権と国籍とを違うものと思い込み、市民権の申請をして日本国籍を喪失する事例がしばしば見られます。日本国政府機関に探知されるまでは記録等に反映されることはなく、日本国籍+フィリピン市民権状態で過ごせてしまったりしますので、手続きを取っても問題がないと思い込んでいる人も一定数おり、また、手続き代行をする業者などもこのリスクについてあまり説明していません。 しかしながら、たまたまあった職務質問でフィリピン身分証明書の所持から発覚して国籍喪失した例や、知識を得た周囲の者からリークされ日本国籍を喪失した例などが起きています。 日本国籍喪失になることを知らなかったという主張は通りませんし、この状態から日本国籍を復帰するのは非常に時間と労力のかかる手続きになり、その手続きの間は外国人として在留許可を取得・更新して日本に滞在することになります。 # 未成年者のフィリピン人親が市民権承認申請を行った場合 ところで、フィリピン人の子であることを理由とする未成年者の市民権承認申請については、フィリピン人である親が申請することとされており(the Bureau of Immigration’s Law Instruction No. RBR-99002, issued on 15 April 1999。 https://www.foi.gov.ph/requests/aglzfmVmb2ktcGhyHAsSB0NvbnRlbnQiD0JJLTg3MTA0NzA4OTM5Ngw )、両親による共同申請の形式を取っていません。また、他方の親の同意も要件とされていません。 このため、婚姻中の夫婦間にある未成年の子に関するフィリピン人親のみによる申請は、日本法上の親権者による申請としては扱われないため(親権の共同行使 民法818条)、未成年者についてフィリピンの国籍が承認されたとしても、「自己の志望によって外国の国籍を取得したとき」にあたらないと考えられています(日豪夫婦間における豪人夫単独申請による未成年子のオーストラリア国籍の取得と日本国籍喪失に関する「国籍相談 No.471」戸籍時報840号62頁・2023年6月参照)。(個別的に日本人親の承認を求められたり、日本人親の作成名義の書類を提出すると国籍喪失するおそれがあります。) この場合、未成年の子についてフィリピン国籍が承認されると日本とフィリピンの重国籍者となることから、法定の期限までに国籍選択の手続を取るべきこととなります。 ![[国籍法14条]] 離婚等の結果、親権をフィリピン人の親のみが行使している場合、その親による市民権承認申請は国籍喪失事由となります。